枝ものの未来を探しに、和歌山県新宮市を訪問

涼やかなグリーンに目を奪われる夏の枝もの。この時期の人気品種であるドウダンツツジやアセビは山の自生木の枝を収穫する「山採り」によって市場に流通します。
日本中の山には美しい枝がまだまだ眠っているのではと考えていたところに届いた1通のメッセージ。まだ見ぬ枝ものを求めて、和歌山県新宮市の山採り生産者さんのもとを訪ねました。
今年も本格的な夏が始まりました。夏らしい枝ものの主役といえば、ドウダンツツジやアセビたち。これらは生産者によって管理された畑での栽培が難しいため山の自生木の枝を収穫しており、この方法は「山採り」と呼ばれます。

葉つきのよいドウダンツツジ
厳しい自然環境のなかで育ったワイルドな樹形や力強さは、古くから生け花などでも好んで使われてきました。
しかし、手付かずの山に身体ひとつで入り1本ずつ枝を切り集める作業は、滑落や野生動物との遭遇など危険と隣り合わせ。枝ものの需要が高まるなかで山採り生産者は高齢化などの理由で減り続けています。そんなとき、和歌山県新宮市で山採りをしているという方からSiKiTOのSNSにメッセージが届きました。
この地域には訪問経験がなかったこともあり、ぜひ一度伺いたいとお願いしSiKiTO代表の佐藤が現地に向かいました。 海・山・川に囲まれた新宮市には世界遺産・熊野古道や熊野速玉大社があり、神話の時代からつづく歴史的背景のある地域です。

まず東京から大阪へ移動し、なにわ花市場の担当者さんとともに車で約4時間かけて新宮市に到着。メッセージをくださった方々と合流すると、さっそく山へ。プロフェッショナルとともに山を歩き、枝ものについて教わる時間は産地訪問の醍醐味です。
「ドウダンツツジ以外にも、山には魅力のある枝がたくさんある。そういうものをもっと使ってほしい」という言葉どおり、次々に山の枝ものを紹介してくれました。 そのなかで佐藤が特に注目したのは「コメツツジ」という品種。 和歌山地域に多く自生しており、お米のように小さな葉が可愛らしい!春には淡紫色の花が咲きます。

市場での流通はほとんどないとのことですが、繊細な枝ぶりながら葉が多く、観賞用として十分な存在感があります。5〜10月頃まで流通できて日持ちもよいと聞き、その場で仕入れのお願いをしました。5月下旬から、一部のお客様へお届けしています。
今回大注目のコメツツジ
もうひとつ印象に残っているのは「ガクウツギ」。 アジサイの仲間で、春の終わりに白い花が咲いた姿はとても愛らしく、こちらも枝ものとしての流通はほとんどないのだそう。

印象的だったガクウツギ
未来の人気品種となるかもしれない枝ものに出会うことができ、実りの多い産地訪問となりました。快く受け入れてくださったみなさまには改めてお礼を申し上げます。

岩地でたくましく生きるアセビ
今回のように、全国各地の山にはまだまだ未発掘の枝ものがありそうです。しかし、素人がやみくもに山に入ってもおそらく目当てのものは見つかりません。
「観賞用にふさわしいか?」「量は採れるか?」「日持ちするか?」「流通に耐えられるか?」「そもそも採ってよいものか?」など、商品として流通させるには多くの条件を満たす必要があるからです。
今回の訪問でも、山を歩きながら「これは少し奥に入ればたくさんある」「これはあまり量がない」「これは日持ちしない」「これは流通時期が短い」といったことを具体的に教えていただきました。
このような知識は、web検索やAIからは決して得られないもの。長い間、山採り現場で経験を積んだ方にしか分からないことばかりです。
山のなかから商品を見つけ出す彼らは、花き業界では「山賊」と呼ばれることも。

和歌山の「山賊」たち
物騒な響きではありますが、屈強な肉体と豊富な知識で枝ものを収穫する仕事ぶりへの尊敬のまなざしが込められた呼び名なのかもしれません。


枝もの定期便でお届けしたコメツツジ
SiKiTOの運営会社であるTRINUSの企業ミッションは、「価値ある資源を現代の暮らしへ」。 枝もの定期便を通じて山に眠る“価値ある資源”を現代の暮らしに届けていくことができるよう、これからも山のプロたちから学んでいきたいと思います。
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