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記事: 一級建築士・空間プロデューサーに伺う「枝もの」の魅力


一級建築士・空間プロデューサーに伺う「枝もの」の魅力


一級建築士の資格を保有し、(株)&R建築設計の代表取締役としても活躍するRie TANAKA(たなか りえ)さんにインタビューです。

住宅だけでなく飲食店や各種サロンの設計案件、インテリアやディスプレイを含めた空間プロデュースなど、総合デザインを手掛けるRieさんに「枝もの」の魅力や設計業界における「枝もの」の存在意義などを伺いました。

一級建築士の視点から見る、枝ものの魅力

―Rieさんが考える枝ものの魅力は、どんなところにもありますか?

季節のプレゼントとして、おうちにお呼びいただいた際にお渡しすることがあります。お花ですと、種類によってはお手入れが難しかったり、1~2週間で鮮度が失われてしまいますよね。枝ものだと1ケ月くらいは持つので長く楽しめますし、シンプルだからどんな部屋にも馴染みやすい。例えば、梅や桜をつぼみの状態でプレゼントして咲くまでの時間、花びらがヒラヒラ落ちる時間など経過を楽しめるのも素敵だと思います。

―実際Rieさんもお家に枝ものを飾っているんですね?

よく飾ります。大きいものを買ってきて、部分的に剪定し、美しく整える時間も好きです。切った枝も、小さい花器に生けて飾ります。

 

―枝ものをインテリアに取り入れた際のコツをぜひ拝見したい​​です。 

あまりコツは意識してないですが、季節感があるものを選ぶことが多いです。葉が落ちたり、色が変わったりするのもまた素敵ですし、それによって空間の表情が変わるのも素敵ですよね。

洋室・和室どちらにも合わせやすいので、インテリアの一部として家に飾りやすいし、空間プロデュースをする際にも使う機会は多いです。

―お仕事ではどんな時に使われますか?

インテリアとして、大きくて影響があるものをまとめてアイキャッチとなるよう主役にしたり、小さいものをシンプルな複数の花器にそれぞれ生けて、一隅を照らす名脇役にしたり。

 

―高さを自由に調節できますもんね。 インテリアの中のアクセントという感じでしょうか。

そうですね。インテリアは人が作ったもの、つまり「人工物」なので直線的なものが多いし、曲線だとしても人の手によって描かれたものになりますよね。そこに自然にできあがったもの「自然物」が入ることで対比効果も生まれて、美しくまとまりやすいと感じます。

 

インテリア業界でも伸び高まる枝ものの需要

SNSの発展に伴ってライフスタイルを発信するインフルエンサーが生まれ、自宅のインテリアをUPする方が増えました。 そういった方の投稿を見てみると、植物を飾っている写真はよく見かける印象があります。 特に都会に住む方はお庭がない方も多いと思います。

そんな時に家の中の限られた空間でも、オリジナルガーデンと言うと大げさですが、植物を置いて季節を感じるという楽しみ方をしている人は多い印象です。

 

―私たちで、造園や緑地環境の家の専門 東京農業大学教授・水庭千鶴子(みずにわちずこ)先生を訪ねた際、「家の中に植物を取り入れると心の癒しに繋がる」というお話をお聞きしました[*1]。

それはありますよね。植物が家の中にあると多かれ少なかれ最低限の手入れが必要になってきますが、その時間も愛しいというか。

私を含めて皆さん、普段「あれしなきゃ、これしなきゃ」って何か追われていることが多いと思うのですが、水をやったり土を触ったりすると無心になれて。そういう、「敢えて手間をかける時間」は良いなと思います。

ムーブメントと言う意味ではもうひとつ、最近「ジャパンディ(Japandi)」スタイルという、北欧と日本が持つミニマルな性質や美しさを融合させたスタイルがトレンドのひとつにあります。

例えば、畳のスペースだけど北欧のテキスタイルがあったり、ベッドのある寝室のパーテーションに障子を使ったりしますが、そこに枝ものは空間のアクセントとして、溶け込みやすいように思います。

*1:記事はこちら【枝の快適よさ】四季を運ぶ枝ものは、家の中の『庭』になる)

 

―なるほど。弊社が新しくオープンしたカフェの内装も洋風と和風を掛け合わせていますが、枝が良く似合います。 「ジャパンディ(Japandi)スタイル」の流行にはどんな背景がありますか?

建築系のトレンドは時事的なことが反映される部分があります。少し前から、コロナの影響で「家時間」が見直されました。それにより、居心地の良さが重視されるようになったことが大きいと思います。

「家でゆっくりしよう」というとき、カーペットや畳だったり、麻の素材を好む方が増えたように感じます。そこに植物が合うというのも、枝もの人気の理由のひとつではないでしょうか。

2024年9月に幕張にオープンしたSiKiTO CAFE
(HPはこちら

 

植物を主役にしたカフェもプロデュース

(写真:Kazufumi Shimoyashiki)

―最近では、植物が飾られたカフェも設計・デザインされました。

そうなんです。オーナーがシンプルに植物が好きで。

カフェに来た人が植物を見ることもあるし、植物を見に来た人がカフェを利用することもあるし、ひとつがきっかけでもうひとつも注目しもらえる状態をつくることができます。TRINUSのSiKiTO CAFEとも、似ていますよね。

こちらのカフェではオリジナルの寄せ植えがお店のインテリアにもなっていますが、気に入った寄せ植えはもちろん購入もできます。寄せ植えのワークショップなども開催する予定です。

 

―植物を通じて会話もはずみそうですね。

周囲にカフェが本当に少ないので開店間から楽しみにされている方も多くいらっしゃいました。季節ごとに飾られる種類も変わるので、何度訪れても楽しんでいただけると思います。植物があるとインテリアに温かみも生まれますし、管理の手間も楽しめたら良いですよね。

―最後に、これから枝ものはどうなっていくと思いますか?

建築と自然との関係性というのは永遠のテーマなので、そういった意味でも、自然を空間に取り込むことは不変だと思います。家で自然を感じられる枝ものを含む、花や植物の需要はより高まっていくと思います。

 

インテリアのプロの視点から、枝ものの良さを語ってくれたRieさん。

和にも洋にも、季節感を感じられる「自然物」としての存在は、まだまだ未来への可能性を秘めていることを教えてくれました。

SiKiTOでは、枝ものとの素敵な出会いをこれからもたくさんの方にお届けいたします。

 

プロフィール | Rie TANAKA

株式会社&R建築設計 代表取締役/一級建築士/デザイナー

北海道生まれ。札幌・大阪・東京の設計事務所を経て、2020年に独立。建築設計を中心に、家具やロゴ・ディスプレイを含めた空間プロデュースなど総合的なデザインを考える。個人から企業まで、全国から依頼が絶えない。

    

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