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記事: 【枝もの生産現場から】静岡県湖西市のコデマリ農家・豊田さん

【枝もの生産現場から】
静岡県湖西市のコデマリ農家・豊田さん

温暖で日照量が多いことから、日本有数の花の生産地である静岡県浜松エリア。

浜名湖の西岸、静岡県の最も西に位置する「湖西市」は日本一のコデマリ産地。なんと全国シェア8割を誇ります。

春先に雪のような小花が枝いっぱいに咲きしだれ、「枝もの定期便」でもご好評いただいたコデマリは、数ある枝ものの中でも非常に栽培が難しい植物なのだそう。

美しく咲き誇る枝ものの生産現場について学ぶため、湖西市でコデマリ農家を営む豊田政史さん(41)のもとへとSiKiTO代表の佐藤が訪問しました。

ーさっそくですが、豊田さんが生産されている植物を教えてください

現在、私が最も力を入れているのはコデマリです。春には約10万本を出荷しています。

コデマリ生産風景

ほかにもミカンやパンパスグラスも作っていて、普段は家族中心ですが繁忙期にはサポートスタッフも加わって10名ほどで働いています。

ーいつ頃から、湖西市でコデマリを作られるようになったのですか?

今から70年以上前、昭和27年頃ですね。

温暖で気候が良い浜名湖畔には古くからミカン農家が多かったのですが、彼らの冬時期における収入源になること、少ない面積でも栽培できることなどから、戦後の農業立て直しの中でコデマリ栽培の普及が進みました。

現在は約10.5haのエリアに52軒の生産者がおり、年間180万本ほどのコデマリを出荷しています。

そして昭和47年頃には個人出荷だった農家が集まって農協への出荷が始まり(共選/きょうせん)、現在では全国各地の主要市場に出荷し、湖西市のコデマリが全国に出回るようになりました。

ーコデマリは通常の開花時期は3~4月ですよね。枝もの定期便で取り扱ったのは2月と随分早いですね?

通常より早く成長させる「促成(そくせい)栽培」を行っているからです。

私たちはコデマリを育てる過程で、休眠したのを見計らって落葉処理をします。葉を落として芽吹きを促すことで、より力強く育つためのホルモンを出させるんです。

そうして冬の低温にあてた後、ハウスの中で暖房機であたためます。室温をしっかり管理することで通常よりも早く花が咲かせています。

(画像はハウス内の暖房機)

このように育てた花が1月頃から出荷され、その次に暖房機不使用のハウスで暖かく育てたもの、最後に露地もの[*]と続きます。

ハウスで育てたものは葉が傷まず美しいので、市場からのニーズも高いです。市場からは「年末に出荷できないか」と要望が来るのですが、そこまで早くむりやり咲かせてしまうと、その後数年間は株自体が傷んでしまうので難しいですね。

[*]ハウスなどを使わず、屋外の畑で自然に近い状態で栽培したもの

ー豊田さんの1年の農作業スケジュールを教えてください

年が明け、1〜2月からコデマリに花がつき出荷作業がスタートします。出荷が終わるとハウスのビニールを外して翌年に向けて肥料をまき、畑の管理を続けます。

並行して3〜4月は別の畑で育てているミカンを出荷し、GW明けからはコデマリの間引き作業です。

コデマリはひとつの株から200本くらい芽が出ますが、そこから間引く本数によって枝の仕上がりサイズが変わるんです。M〜Lサイズなら残す芽は200本のうち30〜50本くらい。うちでは2L以上の大きい等級を目指しているので、20本くらいまで減らします。

2L〜3Lサイズのものは花屋さんにはあまり並ばないですね。どんな花にも見劣りしないので、ホテルのロビーやイベントの装花に使っていただいています。

コデマリを測定する様子

(画像は出荷前作業の様子。重量で等級が分かれるのだそう)

秋にはパンパスグラスの出荷がありますが、その間もコデマリには虫が付かないように消毒をしたり、追肥を与えたり…こう考えてみると、コデマリは1年中ずっといじっていますね(笑)。

ー手間暇かけて育てていらっしゃるのですね。

そうなんです。実はこれまで、他の枝ものも育ててきたんですよ。

コギク、エリカ、グニユーカリ、ヒイラギ、ヒイラギナンテン、竹…。いろいろ作って出荷してきましたが、その中でもコデマリは育てるのが難しい。

農業を初めて23年経ちましたが、今だに失敗することがあります。80歳くらいの大ベテランでも失敗することがあるようです。 

ー難しいポイントは?

まず、温度管理ですね。少しのミスが花つきに影響してしまうんです。

コデマリは秋は紅葉し、冬は葉を落として休眠する植物。11月以降に15℃を下回る寒さが40日ほど続くことで花つきが良くなります。

つまり、冬の寒さが足りないと休眠日数が少なくなり花つきが悪くなる。そうすると1月の出荷がとても難しくなります。 

(画像は栽培ハウス内の様子。奥の大きなものは間も無く出荷、手前の小さなものは1年かけて育てた後に出荷される)

各生産者がそれぞれの経験や勘を生かして試行錯誤していますが、できたもの全てが出荷できることは稀です。最悪の場合、全部がダメになることも。ハウスの形状や暖房機の温度、畑によって環境が違うので、共通の結論が出るわけではありません。

相手は自然。毎年うまくいくわけではないところが、難しくも面白いところですね。

もうひとつの問題は後継者不足です。

僕が就農した頃には128軒あったコデマリ農家が今は50軒ほど。僕は今41歳ですが、今でも若い方から数えて2~3番目くらいです。

スタートしてから軌道に乗るまで何年もかかったり、できあがった農作物の状態がよくない時、売れない時のつらさもあったり…。それでも、自然相手の仕事を楽しい・やりがいがあると思えるからこそ、この仕事を続けています。

ー生産者・豊田さんにとって、コデマリの魅力とは?

たくさんの白い花、緑の葉、優しくしだれる枝、どれも清楚な美しさを醸しているところですね。

大きなコデマリは単体でもボリュームがあるので、さっと生けるだけでも迫力が出て美しいですよね。好きな形に整えたり、ボリュームを調整しやすいところも魅力です。

枝を小さく切り分ければ、他の花とアレンジするなど使い方の幅が広がります。

ーコデマリのお手入れや、もっと楽しむためのコツはありますか?

水が下がりやすいので、まずはお水を切らさないことですね。

あと、これは生産者の間ではよく知られているワザですが…コデマリの白い花を楽しんだ後に、水に食紅や染料を混ぜてみてください。そうすると、花が染まって色づきます。黄色や水色など自由に染められて面白いですよ。

淡い青に染めたコデマリ

でも結局、本来の「白」がいちばん美しいなと思うんですけどね。

ーこれはぜひやってみたい!最後に「枝もの定期便」ユーザーへのメッセージをお願いします。

1本で飾っても他の花と合わせても見劣りしない、存在感のあるコデマリをこれからもお届けしていきたいと思っています。

花のある暮らしをぜひ楽しんでください。

 

自然の恵みを受けながら、1年間丹精込めて育てられたコデマリ。

可憐な白い花を染める大胆なテクニックには驚きでした。秋のパンパスグラスも、同様の方法で染めることができるそうですよ!

豊田さんのコデマリ、これからも期待しています。ありがとうございました。

PROFILE | 豊田 政史


(写真左。右はJAとぴあ浜松 神村さん)

静岡県湖西市でコデマリ農家を営み、春には10万本のコデマリとミカン、秋には1.2万本のパンパスグラスを主に生産。
難易度の高いコデマリ生産に熱心に取り組んでいる。

    

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