NYで生まれた「本物の日本茶を世界へ届けたい」との想い《NODOKA》
ニューヨーク・ブルックリンで創設された、オーガニック日本茶パウダー専門ブランドNODOKA(ノドカ)。伝統ある日本茶の新しい魅力を様々な形で発信しています。
そんなNODOKA代表の洪(ホン)さんに、開発ストーリーやお茶に対する想い、おすすめの楽しみ方まで、その魅力を語っていただきました。
−NODOKAを開発したきっかけを教えてください
世界的にお茶がブームになっていく中で、「本物の日本茶を海外に伝えたい」「何か自分にできることがないか」と思ったことがきっかけです。
NYで4年ほど日本の文化・商品を現地で広める仕事をしていた中で、2013年頃から「抹茶」という単語がトレンドになっていきました。
ですが、単語や名前は知っているけれど、抹茶そのものを理解していない方たちがほとんど。「日本茶」と言ってはいるけれど中国産のものも多くありました。
急須を持っている方も少ないので、お茶が生活の中で習慣になりにくいなど、日本茶の魅力がうまく伝わっていないもどかしさを感じていました。
−NYで日本茶の魅力ともどかしさを同時に体験されたんですね
そうですね。特にNYには本当にいろんなタイプの人がいるので、幅広い人にアプローチできるお茶の魅力を実感しました。
実は、お茶は水に次いで世界で2番目に飲まれている飲み物なんですよ。コーヒーではなくてお茶というのが意外ですよね。例えば、ビーガンや、宗教上お酒が飲めない方はいても、お茶が飲めない方はほぼいません。お茶はどんな人種でも、誰でも楽しめるんです。
人・文化・食材にも何にでも合う、柔軟に形を変えて、いろんな人・文化にアプローチできるところがお茶の魅力だと感じています。
−確かにお茶ならではの魅力ですね。開発ではどんなことに苦労されたのでしょうか
やはり生産者を見つけることですね。プロジェクトをスタートするときに、まずは一緒に取り組んでくれる茶園農家探しから始めましたが、茶園はホームページもないところも多いので、とにかく自分の足で探しました。
ビジネスライクな関わり方よりも、ホームステイしてみたり、一緒にお酒を飲んだり、実際に現場を見せてもらうことから始めました。
−ホームステイなども経て関係性を築かれたんですね!その過程ではどんなことを感じられましたか?
前向きな話が聞けると思っていたのですが、どちらかというと「もう茶園農家をやめようかな」という声が多いことに驚きました。
茶園農家の高齢化問題は深刻で、平均年齢は60代以上、後継者もおらず、放棄している茶園も増えています。
実際、これだけ海外にニーズがあっても、海外に出ているお茶は全体の5%程度なんですよ。
あとの95%はペットボトルのお茶が主流になっているので、それに合わせたお茶づくりになってしまっています。
−ペットボトルに合わせたお茶づくりによって、どんな影響が生じているのでしょうか
「こだわればこだわるほど売れなくなる」というのが現状で、農薬を使って低コストでお茶を作るという流れになってきています。
そのため、茶園農家そのものが減少傾向にありますが、国内市場でも無農薬認定を受けるお茶は3〜5%と絶対数がとても少ないんです。
国内の需要だけで見ると「無農薬でこだわってお茶を作る意味」が感じられなくなくなってきている。単純にもったいないなと思いますね。
−つくりての生の声として危機を感じられて、ショックも大きかったのでは
そうですね。なかでも一番ショックだったのは、つくりてには海外で日本茶が注目されていることが全く届いていないことでした。
海外で流行っているとお伝えしても、そこから先に進むことが茶園農家では難しいんです。たとえば言語や物流の問題、海外では認可されていない農薬などの問題があり、農家だけで海外までブランド展開していくのは困難だと思います。
茶園農家とのお付き合いの中で日本茶業界の危機と直面して、自分が生産者と消費者を直接繋いで、「どんな人がどんな想いで生産しているのか伝え、お互いの顔が見える商品を世界へ発信していきたい」と考えるようになりました。
−素晴らしい考えだと尊敬します。ところで、NODOKAは現代的でおしゃれな印象ですが、なかでも茶筅がとてもカッコイイです!
ありがとうございます!最近はキャンプブームで、キャンプ人口も増えてきていますよね。その影響もあって、外でも野点(のだて)[*]のように、日本茶を楽しんでほしいと思って茶筅マドラーを開発しました。
キャンプ=コーヒーのイメージが強いですが、外でもNODOKAを手軽に楽しんでもらえると面白いかなと思いますね。
[*]屋外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会のこと
−NODOKAで野点!それはまたカッコイイ!パッケージデザインにもこだわりがあるのでしょうか
よくある和風のお茶っぽいパッケージよりも、シンプルでライフスタイルの一部に馴染むようなデザインにしました。余白をなるべく多くして、新しいお茶の価値観をみんなで作っていこうというお茶の可能性を余白に表現しました。
たとえば、急須が家に合っても「かっこいい!」とは、なかなかならないですよね。コーヒーメーカーはおしゃれでも、お茶や急須は「渋いね」という印象になりがちです。
まずは「お茶を楽しんで飲んでほしい」という想いがありますので、パッケージもそうですが、今までにない細長い茶筅マドラーやスタイリッシュなタンブラー型の茶器なども、デザインにはこだわっています。
−洪さんのおすすめの楽しみ方や、お気に入りのフレーバーはありますか?
おすすめの飲み方としては、夏だと炭酸割りがすっきりして美味しいですよ。スイカジュースに抹茶を入れてノンアルコールカクテル風にしても美味しいです。抹茶の渋みとフルーツの甘みは非常に合いますので、ぜひいろいろなアレンジに挑戦してみてください!
また、最近のお気に入りフレーバーは、玄米茶とほうじ茶です。玄米茶とほうじ茶のパウダータイプは非常に珍しく、カフェインが少ないので、夜にお茶を飲む人やお子様にもお楽しみいただいています。
特選抹茶も、渋みよりも甘味があるところが気に入っています。寒い季節には、ラテもいいですよ。とてもリラックスできます。
−様々なアレンジが楽しめるところもNODOKAの魅力ですね!最後に、ユーザーへ伝えたいことや大事にしていることを教えてください
私たちは「COMMUNI-TEA(コミュニ・ティー)」と言っていますが、「食は文化。そして文化は人がつくるもの」と考えています。
今までになかった、どんなにいいものでも、そこに人が集まらないと新しい形や文化は生まれません。お茶をきっかけに人が集ることで、初めて、新しい文化や人と繋がる喜びや可能性が生まれるのだと思います。
敢えて、ただの「お茶屋さん」になるのではなく、「お茶を通して、色々なことを伝えていきたい」という強い想いをもって今後も活動していきたいと思います。
おしゃれで機能的、都会的なイメージのNODOKA。その反面、農家を一軒ずつ訪ね歩くという地道な努力や、生産者のためにという熱い想いも印象的でした。
そんな努力や想いがあるからこそ商品化にたどり着いた、こだわりの旨味と香りをぜひお楽しみください。
PROFILE | NODOKA
NODOKA代表の洪秀日(ホン スイル)さん。1985年、東京都生まれ。日本企業の海外進出支援等を経て、東日本大震災後、復興支援のためNPO法人 PRAY FOR JAPANスタッフとして活動。2013年より拠点をニューヨークに移し、2017年オーガニックパウダーティーブランドNODOKAを立ち上げました。
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