アップサイクルアイテムに込められた、地域と生産者へのまなざし《ATARA》
日本では古くから大切にされてきた「もったいない」という精神。
ATARA(アタラ)は「もったいないものを余すことなく使う」ことをミッションに掲げ、未利用資源のアップサイクル商品を次々と生み出しています。
ATARAを運営するリマテック東北株式会社の野村さんと、ルームスプレーの開発に携わった千葉さんに、商品開発の裏側や商品に込めたメッセージを伺いました!
−ATARAのブランドコンセプトは?
千葉さん:ATARAのコンセプトは、「もったいないものを余すことなく使う」ということ。特に、私たちの拠点である岩手の未利用資源、低価値資源に目を向けてアップサイクルすることに力を入れています。
野村さん:ATARAを運営しているリマテック東北株式会社のグループ本社は大阪にあります。
創業者がもともと大阪湾で漁師の網元(漁業経営者)をしていたという変わった経歴なんです。
漁をしていた当時は大阪湾でも工場廃液が海に垂れ流されていて、公害が大きな問題になっていました。
品質が落ちてしまったり、風評被害などで魚が売れない状況を改善するため、海をきれいにしようと工場廃液の回収を始めたのが会社設立のきっかけでした。
そのような産業廃棄物を使って、セメント製造時の燃料を作る事業を30年以上続けています。
ただ、通常の原料の方が安かったり、品質の問題でなかなか使ってもらえないというジレンマがありました。
「それならば、自分たちで原料からものづくりをした方がちゃんと循環するんじゃないか」ということで始めたのがATARAです。
−ATARAルームスプレーのなかでも最も象徴的な「りんご」。これを選んだきっかけは?
千葉さん:今、りんごジュースの搾りかすは未利用資源としてとても注目されています。
あまり知られていませんが、実は岩手県はりんごの生産量が全国3位。りんごジュースもたくさんつくられていて、その搾りかすはとても身近な「もったいない資源」でした。
芳香蒸留水だけではすぐに香りが飛んでしまったので精油をブレンドして、フルーツ系のルームスプレーが誕生しました。
野村さん:地域資源を活用する際には、その地域ならではのものや希少性の高いものを使うことが多いと思います。
でも実際は、本当にもったいない状態にあるものって、誰も注目しないほどどこにでもある身近なものだったりするんです。
そんなありふれた素材にあえて着目して使っていこうという意図で、原料を選んでいます。
−ラベンダーも、岩手の未利用資源ですか?
千葉さん:ラベンダーは、リマテック東北の本社がある岩手県大船渡市のラベンダー畑のものを使っています。
大船渡市は東日本大震災で大きな被害を受けた地域。震災後、復興のシンボルとして末崎町という地域にラベンダー畑がつくられました。
毎年摘み取り会なども開催されているのですが、2021年から管理者が大船渡市から民間団体に変わったんです。
もしかしたら摘み取り会後にラベンダーが残るのではと思って問い合わせたところ、やはり残ってしまうものがあるそうで。
少量生産にはなりますが、大船渡市のPRにもつながればと思ってつくったルームスプレーです。
野村さん:震災から10年以上が経って、管理が行政から民間に移行しているケースは他地域でもたくさんあります。中には継続ができなくなってしまうところも。
これからも続いていってくれたらという想いで、本社がある大船渡市のラベンダー畑にお声がけさせていただきました。
千葉さん:精油の原料にも大船渡市のラベンダーを使っているので、純・大船渡産ラベンダーの香りなんですよ!
−バラのルームスプレーのストーリーもぜひ聞かせてください
千葉さん:ATARAの拠点である、花巻市にある花巻温泉バラ園のバラを使っています。
そこでは毎年6月から11月頃までバラを楽しむことができるのですが、品種によって見ごろが異なるので、少しでも見栄えが悪くなったら摘花をするんです。その作業はとても大変で、1日100キロ以上摘花することもあるそうです。
まだいい香りのする状態で廃棄するものもあると聞き、それならば弊社で加工しようと。
時期によって採れるバラの種類が異なるので、その時だけの香りを楽しめるのが特徴です。
ラベンダーもバラも大量生産ができないのですが、アップサイクルによってつくられたストーリーを知っていただいて、未利用資源・低価値資源にも注目してもらえたら嬉しいです。
−3種類それぞれ、おすすめの利用シーンは?
千葉さん:りんごはリラックス系の香りです。マスクの外側にシュッと吹きかけると心地よい気分になれると思います。
ラベンダーは、寝る前に寝室のカーテンや枕元に吹きかけていただくのがおすすめです。
バラは、カーテンなどに吹きかけてぜひお部屋の芳香に。まさにマリーアントワネットのような、優雅な気分になれますよ。
−岩手の風景を連想させるネーミングもおもしろいです!
千葉さん:ありがとうございます。やっぱり岩手にちなんだネーミングにしたいなと思って、1ヶ月以上考えたので嬉しいです(笑)。
ここは妄想を膨らませるのが大事かなと思って、
「リンゴを食べにいわてに行ってみたくなるかもしれないルームスプレー」
「リアスのラベンダー畑に行った気分を味わえるルームスプレー」
「花巻のバラに包まれてマリーアントワネット気分を味わえるかもしれないルームスプレー」
とそれぞれ名付けました。
−地元・岩手への愛が、たっぷり込められていますね
野村さん:先ほどもお話したとおり、あまり知られていない岩手のりんご生産量やストーリーをあえてアピールすることで、岩手のPRにもつなげていきたいという想いもあります。
ATARAが使っているのは、今まで捨てられたり価値がないとされていたものです。そんな原料からつくられた商品が流通することで、原料生産者の副収入に少しでもつなげたいという想いもあります。
商品単体ではなく、地域も一緒に「ロスをベネフィットに変えていく」仕組みづくりをしていきたいですね。
−きちんと生産者への還元につながるのは、私たち消費者にとっても嬉しいことです
野村さん:大量生産大量消費の現代社会は、「たくさん買うから安くしてね」という考え方があると思うんです。でもそれは、必ずどこかにしわ寄せがいきます。そして最もそのしわ寄せがいくのが、原料生産者のみなさんだったりします。
そういったところにきちんと利益がいくようになると、どこにもしわ寄せがいかない社会になると思うんです。それが私たちの目指す理想的な形。
そんな想いに共感いただける方に、ぜひATARAの商品を手に取っていただきたいですね。
もし今そう思っていなくても、ATARAを通じて、こんな取り組みをしている企業があるということを知っていただければとても嬉しく思います
身近な「もったいない」に着目し、新たな価値を生み出しているATARAのものづくり。
ユニークでチャーミングな商品の裏側には、地域や社会の課題に取り組む熱い想いが秘められていました。
心地よい香りを楽しみながら、私たち消費者もサステナブルな取り組みに貢献できるのは嬉しいですね。
素敵なお話、ありがとうございました!
PROFILE | ATARA
岩手県花巻市を拠点に、未利用・低価値資源を活用したものづくりに取り組んでいる。
ブランド名「ATARA」は、立派なものに対し、その価値相当に扱われないことに対する残念だという気持ちを表し、現代の「もったいない」にあたる古語「あたら」から名付けられた。
「もったいないものを余すことなく使う」ものづくりを通し、“ロスをベネフィットに”変えていく社会の仕組みづくりを目指している。
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