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記事: 【ワイナリー訪問】人もぶどうも成長する急斜面。 ココ・ファーム・ワイナリーを訪ねて。

#つくりてを訪ねて

【ワイナリー訪問】
人もぶどうも成長する急斜面。 ココ・ファーム・ワイナリーを訪ねて。

2024年9月にオープンしたSiKiTO CAFEで取り扱う国産ワインのセレクトのため、栃木県足利市のワイナリー「ココ・ファーム・ワイナリー」にお邪魔しました。

人の手がつくる丁寧なワイン造りをレポートします。

 

スキージャンプ級の急斜面で育つぶどうと人

栃木県足利市に位置する「ココ・ファーム・ワイナリー」は、100%国産のぶどうを使った日本ワインで高い評価を得ているワイナリーです。

定番商品はJALのファーストクラスや九州・沖縄サミットなどの国家的イベントにも採用されている大人気ワイナリーなのですが、こころみ学園という障がい者施設が母体となっていることも特徴です。

実際に伺い、まず驚いたのがぶどう畑の斜面。平均斜度38度、上の方は42度という急斜面なのだそう!

南西向きで日当たりがよく、水はけも最高なのでぶどうの生育にぴったりな環境。

傾斜のために耕運機やトラクターが入れないのであらゆる作業を人の手で行わなければならず、草むしりや害虫の駆除、病気になった葉や実の取り除き、ぶどうに傘を被せるなど、多くの作業に知的障がいを持つこころみ学園の園生たちが従事しています。

ココ・ファーム・ワイナリー

1950年代、栃木県足利市の特殊学校の中学生たちとその担任教師によって山野急斜面に葡萄畑を開墾したことからはじまる。

化学肥料や除草剤は一切使わず、醸造場では野生酵母による自然醗酵を中心にワイン造りをおこなっている。

 

北ののぼは66ヶ月。長い時間をかけてワインを育てる「瓶内二次発酵」

「北ののぼ」をはじめとするココ・ファーム・ワイナリーのスパークリングワインは、シャンパンと同じ「瓶内二次発酵」で造られています。

瓶内二次発酵とは、白ワイン・酵母・ショ糖を入れた瓶の中でもう一度発酵させる方法のこと。酵母が糖分を食べて分解することで炭酸ガスとアルコールを生成させます。

長い時間をかけて瓶内で熟成させるのですが、問題は「オリ(澱)」。このオリは酵母による分解過程で発生する葡萄の成分や酵母ですが、見た目や舌ざわりがよくありません。

そのオリを取り除く工程について、とても丁寧に教えていただくことができました。

まず登場するのは、「ピュピトル(Pupitre)」と呼ばれる特別なオリ下げ台。瓶内二次発酵を終えたワインのボトルをピュピトルの穴に差し込みます。

非常に微細なオリは瓶の内面にも付着しており、ただ逆さまにするだけでは瓶口に集まりません。緩やかな角度でピュピトルに差したボトルを揺するように回転させて、少しずつオリを瓶口に集めていきます。

この作業はなんと8〜12週間もかかるそうで、毎日ボトルを揺すりながら回転させる作業を「ルミュアージュ(Remuage)」といいます。

瓶底にある手作業の証

ボトル底に書かれたラインは毎回45°ずつ角度を変え、ルミアージュの進捗を表す印。手作業の証ともいえます。

現代の多くのワイナリーでは機械で行う作業ですが、ココ・ファーム・ワイナリーでは園生たちが1本ずつ手作業で行っています。

ようやく瓶口に集められたオリは「デゴルジュマン(Degorgement)という工程で取り除かれます。

まず、-30℃のネックフリーザーという機械に瓶口を浸しワインごとオリを凍らせて固めます。

専用の栓抜きで開栓すると、瓶内二次発酵によりボトル内で生じたガスの勢いで集められたオリが噴射されます。

最後に、噴射によって減ってしまったワインを充填。

コルク栓をし、「ミュズレ」というヘッドと金属線で封をしたらやっと完成!

その美味しさに惹かれ製造現場について知りたいと訪問しましたが、ココ・ファーム・ワイナリーの生い立ちと働く方々が惜しみなく注ぐ手間暇を知りさらに魅了される機会となりました。

ぜひみなさまもご賞味ください。

 

    

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