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記事: 【枝ものの愉しみ方】枝ものは季節を運ぶ。フラワーデザイナーが魅せられた植物の力

#枝もの豆知識

【枝ものの愉しみ方】
枝ものは季節を運ぶ。フラワーデザイナーが魅せられた植物の力

季節の枝ものを定期的にご自宅へお届けする「枝もの定期便」。お店ではなかなか買いづらい長尺の枝ものを気軽に楽しめるサービスです。

今回は「枝もの定期便」の仕入れに携わるフラワーデザイナー・岡 寛之(おか ひろゆき)さんに、枝ものの魅力や楽しみ方について伺いました。

長年お花に関わってきた岡さんが、改めて気付かされたという植物の持つ力とは。

−最初に「枝もの定期便」について聞いた時の印象は?

初めて聞いたとき、率直に「おもしろいサービスだな」と思いました。

私にとって、枝ものは植物の中でも最も季節を感じられるもの。春夏秋冬を通して、花だけではなく枝ぶりもどんどん変わっていくんですよね。

春は花や葉の芽吹き、夏は葉が青々として、秋は実がついたり葉が色づいたり。冬でも松や柊のような種類を楽しめます。

同じ植物でも、1年を通してストーリーがあるのが枝ものの魅力です。

長い枝ものは持ち歩くのも大変なので、定期便として家に届くことで気軽に枝のある生活を楽しめるのがいいですね。

 

仕事のなかで喜びを感じる瞬間は?

花を見てお客さんが喜んでくれるのはもちろんですが、自分がまだ見たことないものに出会ったときも嬉しいですね。

長く花に携わっていますが、いまだに市場に行くと名前が分からない花や見たことのない植物に出会うんです。

新しい出会いや、生産者さんの努力を知ることができる産地訪問も好きです。

知れば知るほど新しい発見がある、そんなところが楽しいですね。

 

−お花には奥深い魅力があるんですね

花は、1年を通して全く同じものというのはありません。それは儚さでもありますが、時期が終わったら「また来年」と感じられるのが花の醍醐味。

季節を感じることの大切さは、日本人のアイデンティティに刻み込まれていると思うんです。

日本には、立春・春分・穀雨など季節を表す「二十四節気」という言葉があって、空気や天気の変化を楽しむ文化がある。四季がとてもはっきりしているのも、世界的にも珍しいですしね。

柚子湯や節分の柊、お正月の門松など、実は日本の行事にはそれにちなんだ植物が添えてあります。

四季と植物の関係を自然に楽しみ、大切にしてきた民族なんですね。

 

−コロナ禍が花業界に与えた影響は?

人が集まる機会が大きく減ったので、イベント会場での装飾花の需要は減りました。

しかし一方、コロナ禍が始まった頃から街中にあるような小さなお花屋さんがどんどん忙しくなったんです。みんなが自宅に花を飾るようになったんですね。

今は、全世界的に鉢物や花瓶が売れているようです。

イベントはもちろん大切ですが、一般の方が家に飾るためのお花を購入することは尊いことだと感じます。

長年この業界にいますが、改めて植物の持つ力について考えさせられた変化でした。

 

−「枝もの定期便」をどのように楽しんでもらいたいですか?

1本1本の枝ぶりの違いを、ぜひ楽しんでください。枝は自然のものなので、サンプル写真と同じものが届くわけではありません。

想像していたのと違うものが来ても、「あれ、違うじゃん」ではなく自宅に届いた枝との一期一会だと捉えてほしい。

「これはなんだろう?」「おもしろい形だな」と目の前の枝と向き合っていただけたら嬉しいです。

 

−枝ものビギナーさんへ、お手入れのポイントを教えてください

枝の居場所を作ってあげて、少しずつ増やしていくといいですよ。置き場所は、倒れないところが大前提。

枝ものは鉢物と違って日に当てなくていいので扱いやすいんです。乾燥するとよくないので、エアコンの風が直接あたるところは避けましょう。

お手入れのポイントは、こまめに水を換えてあげることと、霧吹きをかけてあげること。水に浸かった部分を切り戻してあげるのもいいですね。

不思議なもので、ちゃんと手をかけてあげると長持ちするんです。声をかけて大切に扱うと植物にちゃんと伝わるような気がして、やはり生き物なんだと感じますね。

枝ものを生ける器には重さがあるものを。「EDA VASE」はバランス良く作られていると思います。

コンクリートの台座がしっかり安定していて、スタンドの上部が丸くなっていることで枝が倒れにくくなります。理にかなっていて美しいので、枝ものビギナーさんにおすすめです。

 

−写真集も出版している岡さん。枝もの写真撮影のコツは?

窓辺に置いて電気を消して撮るのがおすすめです。

窓から入る太陽光で撮ることで写真の色味が自然になります。片側からの光によって立体的な陰影も生まれます。

枝ものは切り花よりも長持ちはしますが、花や葉のみずみずしさがなくなったら換えどきです。

枝ぶりが気に入ったものはドライにしてインテリアにしてもいいですね。ドライフラワーのスワッグを飾るときに支えとしても使えます。

 

−最後に、今後の目標を聞かせてください

まだまだ植物について知っていきたい。そして、植物からもらった感動を皆さんに伝えていきたいと思っています。

コロナ禍で外出する機会が減り、家に花を飾ってくれる人が増えました。このとても素敵なことを流行で終わらせず、文化として根付くようにしていきたいです。

そのためには業界全体が努力していかないといけない。

僕たちがどんなサービスを作るか、粗悪なものを渡さないか、ということが大切です。そういう思いで「枝もの定期便」に携わっていきたいです。

 

日本人と四季の関係や花の魅力、枝ものの楽しみ方について教えてくださった岡さん。長年様々な花を取り扱っている岡さんでも、まだ見ぬ植物との出会いや発見を楽しんでいました。

おうちにいながら、うつろう四季の変化を楽しめる「枝もの定期便」を通して、ぜひ植物の持つ力やストーリーを感じてみてくださいね。

 

PROFILE | 岡 寛之(おか ひろゆき)

フリーランスのフラワーデザイナー。
広島の生花店で働いた後、半年間デンマークへ留学。帰国後、フラワースクールや花の仲卸での勤務を経て、フリーランスに転身。
2013年7月、ベルギーのStiching Kunstboek社より発刊した初の単独作品集『HiroyukiOka MONOGRAPH』はヨーロッパ各メディアでも数多く取り上げられ、国内外から高く評価されています。

    

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