【枝もの定期便ウラ話】
林業従事者の新たな収入源に 奈良県黒滝村でのアセビ産地形成
「アセビ」など山採り品種が供給不足に!?という情報を得た2023年。日本原産ならば、まだまだどこかの山に自生しているはずと探し回り、ついに発見! アセビの供給量増と林業従事者の新たな収入源として期待の取り組みをご紹介します。
夏の代表的な枝もののひとつ「アセビ」が供給不足になるかもしれない
「枝もの」の収穫方法は主に2種類あります。
ひとつめが、枝もの畑で人工的に栽培する方法で「栽培もの」などと呼ばれます。
ふたつめが、山中で自然に育ったものを収穫する方法で「山採り」などと呼ばれるもの。
近年、山採り品種であるドウダンツツジとアセビの需要が急増し、供給不足になるかもしれない。
そんな情報を聞き、枝もの探しの旅が始まりました。
アセビ自体は全国に自生しているのですが、特に葉っぱが細かくきれいなアセビが多いのが奈良県・和歌山県・三重県あたり。そこで、ネットワークがあった奈良県内の各森林組合に声をかけ、最終的に出会ったのが「黒滝村森林組合」さんでした。
「森林組合」とは森林の所有者が森林の保全や林業に関わる事業を共同で行うための組合のことですが、近年は木材価格の下落が続いており厳しい状況なのだそう。
この状況をなんとかしたい、杉やヒノキのような建築材以外の収入源を得られる可能性があるのであればチャレンジしてみたい、と手を挙げてくれたのが黒滝村森林組合の的場さんです。
さっそく山中のアセビを見に行こうと出発したものの、目的地までは恐怖の道のりでした。
急カーブが続く狭い林道をぐいぐい登っていく自動車のすぐ横は断崖…。めっちゃ怖い!ちなみにこの道も森林組合のみなさんが作ったものだそう。本当に命がけの仕事です。
道中、遠くに鹿を発見。熊も年に1度は遭遇するそうです(!)。
肝を冷やしつつ辿り着いた先にあったのが、つやつや小葉の立派なアセビの数々!ようやく出会えた宝物の美しさに喜ぶ私たちですが、林業従事者にとっては建築材になる杉やヒノキの足元に生えている「雑草」という扱い。
これまで手間をかけて刈り取り処分していたアセビが商品になると聞き、とても驚かれていました。
常緑性のアセビですが、新芽が展開しはじめるのは4~5月頃。新芽が若くて赤いうちは水が下がりやすいため出荷はできません。
新芽が少しずつ固まり黄緑色になる6月頃になると出荷可能になり、7~8月まで緑色が深まっていきます。
観賞用切り枝の出荷初挑戦となる黒滝村の方々のために指導役として同行してくれたのが、なにわ花市場枝もの担当 柏原さん(写真左)とアセビ出荷歴20年の生産者 小西さん(写真右)。
枝の剪定や選別方法など惜しげもなくレクチャーしてくれました。
黒滝村のアセビは、さっそく6月下旬〜8月中旬頃にお届けする「夏の枝もの」にも使用しています。
*黒滝村以外のアセビも使用しています
現在なにわ花市場にアセビを出荷している主要生産者は小西さんを除くと全員高齢で、今後数年で多くが引退してしまうのではと言われているそう。
福岡県いわき市や群馬県赤城山など、これまで訪問してきた多くの枝もの産地も同じ課題を抱えています。
このまま何もしなければ国内の枝ものの流通量が減り続け、「枝もの」というひとつの文化が存続できなくなってしまう。
「枝もののある暮らし」をこれからもお客様にお届けできるよう、SiKiTOができることをこれからも続けていきます。
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